2018年10月
拝啓
秋雨の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。夏の暑さも和らぎ徐々に秋を感じさせる肌寒い日が増えてきました。さて、長い間事業を行っていれば取引先の経営不振等で債権を回収できないということがあるかもしれません。今回は貸倒金の処理についてご紹介したいと思います。
貸倒れとして経費に認められる場合
1.法律上の貸倒れ
取引先において財務状況が悪化し会社更生法や民事再生法などの申請がされ、その適用が決定したときは法的にカットされた債権についてその事業年度の損金に算入することができます。ただし、申請の段階では損金算入はできませんが、下記3.の形式上の貸倒れに該当すれば損金計上できます。
取引先について債務超過の状態が相当期間継続し弁済を受けることができない場合は、取引先に債権放棄(債務免除)することを書面(一般的に内容証明郵便)で明らかにすれば、その債務免除額を損金に計上できます。
2.事実上の貸倒れ
取引先の財務状況や支払能力等からその全額が実質的に回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金に計上できます。
3.形式上の貸倒れ(売掛債権のみに限る)
継続的な取引を行っていた取引先の財務状況や支払能力等が悪化し、債権を回収できなくなりその取引を停止した場合、その取引の停止日や最後の弁済日などから1年以上回収ができていない時は、売掛債権から備忘価額(1円以上)を控除した金額を損金計上することができます。また、6か月以内に2度不渡を起こした場合、銀行取引停止となり債権の50%を貸倒引当金を繰入できます。
貸倒損失の計上を認められるために
貸倒損失は最近の税務調査で狙われる傾向にあります。特に上記でいうところの事実上、形式上において債務者から債権を回収できていない状況で、「1度電話したけど回収できませんでした。」という程度では税務職員から厳しく追及されかねません。貸倒損失を計上するにあたって回収努力をした証拠を残しておきましょう。具体的には電話した日時や相手の担当者、会話の内容といった電話の記録、内容証明郵便、戻ってきた督促状などが挙げられ、社内でしっかりと記録を保管しておくと良いでしょう。
また、債務者の財務状況、支払能力等をしっかりと調査しておく必要があります。債権に対して担保や保証人が設定されている場合には、回収可能性があると判断されて損金計上できなくなることがあります。いずれにしても、着実に前もっての準備を進めていくことが大切です。
ご不明な点、ご相談等ございましたらお気軽にご連絡ください。
敬具
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作成者 堀川一輝