2022年5月
若葉の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。相続税の節税対策として「不動産を購入して相続税評価額を減らす」というものがありますが、今回はそれに関連して先月起きた最高裁の判決についてお話をしようと思います。
内容
当時会社社長であった北海道の90歳男性が2009年に東京都にある2棟のマンションを約14億円で購入し、2012年に子供らが相続しました。その際、子供らは当時の路線価をもとにマンションの価格を約3.5億円と評価、購入時の借入金などを差し引いて課税価格を約3千万円とし、課税されない額6千万円を下回ることから相続額を「0円」としました。これに対し、税務署は路線価による相続税の申告を否定し、独自に不動産を鑑定し、時価で評価して追徴課税しました。これを不服として争われていましたが、先月最高裁で棄却され、国税側が勝訴しました。
問題点
基本的には、税負担の公平性を「著しく」欠いていた、という結論にはなりますが、そう判断するに足りる以下の要点があります。
- 借入の目的が、資産形成ではなく相続税を下げるためだったことが判明し、借り入れの合理性がなかった(借入がなくとも購入できたにも関わらず借入のおかげで課税価格を抑えていた)
- 購入時の不動産は約14億円と高額であったにも関わらず、相続税を0円で申告していた
- 男性が不動産を購入したときから相続までが早かったことから、節税目的の駆け込み的な購入と判断された
- 相続後、すぐ不動産を売却していた
終わりに
今回行われた節税対策は、流れだけを見ると一般的に行われている対策ではあったのですが、過度であったことから国からメスが入れられた形だと思われます。相続税の節税対策もより一層、慎重を期す時期に来たのではないでしょうか。
東京都墨田区錦糸3丁目2番1号
アルカイースト5階
大西会計事務所
TEL03(3626)2035
FAX03(3621)3843
URL:http://www.ohnishikaikei.jp
作成者 篠田 健太